Lesaria の Multiple-Choice

とりあえず、日記がメインのはず。最近では、小説を公開したり、聴いた音楽や考えてることについて話してます。

落書き小説「ルミエール」

「ルミエール」

 あの頃の私は胸の中の狂おしい熱に、心が焼けつき、ただれて、それを冷やす無駄な努力をしていた。有り余る金に物を言わせ、毎晩のように女性達と酒を煽る。ブガッティで繰り出し。早い時間はクラブでモエシャントン、ドンペリ、クリュグ。その後は女性を伴うこともあれば、日によってはバーで静かに、マッカラングレンファークラス、グレンフィック。そして夜明けを待つ。酒の美味さを分かっていたようには思わないが、呑むことに酔い、煽る酒に夢を見ていた。その先に何かが変わるのではないかと。そして冷やしたい気持ちとはあべこべに、毎晩のアルコールが新たな火種を胸に投げ込んだ。

 その日も月が昇る前に虎ノ門のホテルで相棒と女の子数名と共に目を覚まし、スペイン大使館の方に見送って、そのまま車を走らせた。池袋、新宿、原宿、渋谷、青山でもどこでも良かった。その日は、手近で調達することとなり。六本木の人通りの多い路地にとめて、いつもの手口で誘う。相棒がもう十分だろうと耳打ちしたが、あともう一人ほど僕の空虚だったり焼けついたりする胸が欲しがった。だから次に目があったショートヘアでパンツを履いた美人に反射的にいつもの陽気なノリで声を掛けた。

「ねぇ、君も来ないかい」
その子は怯える風でもなく。
ちょとだけ考えてから私の目をまっすぐ見る。
「構わないよ」と言った。骨格のハッキリした痩せっぽっちの体つきには魅力的で。くりっとした目には最近ではお目にかからない意味が宿っていた。だけれど一つだけ疑問を感じて言葉に変える。
「君は男の子?それとも女の子?」
「あなた変わってるね」
「え、どうして?」
「僕は大抵そのことを気にかけてもらえないから」
そう答える唇は自分の魅力を良く知っているようだった。

 その子はヒカルと名乗った。僕たちは7人で夜の帳の降りる前に数件ある行きつけのクラブの一つに腰を据えて飲んだり、踊ったり、食べたり、戯れて、皆べろんべろんだった。僕はいつもの通り、女の子たちに均等に接したつもりだったが、後日、相棒には、ヒカルとばかり話していて、場を盛り上げるのに苦労したと愚痴られた。

「何かを探してるように見えるよ」
ミラーボールの下、踊ってる時に言われた。
「私がかい、大抵のものは持ってるよお金ならあるからね」
笑って答える。
「気付かないようじゃ重症だね」
と返す。
「君こそ何かを探してるんじゃないか」
「僕は自分を探してるんだ」
澄ました顔でそう答える。

バーで隣り合って言葉を交わしていると
「あなたが探しているのは誰かの代わり?」
唐突にそう言う。ひやりとする。その言葉は私を一瞬不機嫌にさせる。
見透かされているようで。ヒカルは手を握り暫くこちらを見つめる。
安心できる温かさが心に溢れた。不意にグラスに手を戻し何事も無かったように口に運ぶ。

 その日は明け方まで飲んで過ごした。朝には相棒と女の子二人がおらず、ヒカルと一緒に残りの女の子を送り、少し歩いて一丁目付近まで来た時、私は思い切って誘った。こんなことに躊躇を覚えるのは長くなかったことだ。

 触れられる度、安堵を覚えた。肌を合わせればしっとりしてぴたりと張り付き絹のようだった。焼きついた胸は冷まされ、ゆっくりと心地よい温かさが流れ込む。攻め立てるのは自分だが裏腹に調律されるのも抱かれているのも奏でられるもの私だった。最後にはヒカルの膝の上で泣いていた。私達はその日の夕方、電話もSNSもIDも本名すらも教えあわずに別れた。この時、連絡先を交換していれば私の人生は変わったかもしれない。そうすることが許されるのであったなら。

 何にせよ、その経験が私を酒とバラの狂乱から遠ざけた。程なく父が他界し、取り決められた相手と籍を入れて跡をついだ。妻となった女性は私の放蕩を覚悟していたらしいが思いのほか落ち着いていることに安堵したようだった。年月が過ぎた今でも時おり、すれちがう他人に面影を見いだして振り替える。男だったり、女だったり、時々で違う。昔ほど酷くはないがたまに胸がジリジリと焼ける時、今では妻の手が私の胸をさする。

 

 



 この小説は一日で書きあげることを目標にしており、その上スポーツクラブに行ったり、ベッドで昼寝したりと、詰まるとすぐ放り出しながら書いたので、話が長くなるようにではなく短く終わらせるような流れを選んだ。逆に長くするにはソコを盛ればいいのだという点で勉強にはなる。

 本日も後少ししかないのであとがきも簡潔にとは思うのだけれど。僕はヘテロな男子だけれど、栗本薫の「真夜中の天使」とか萩尾望都の「残酷な神が支配する」を読んでいるし、とかで今で言うBLを、まぁ知らないわけではない。あと両性具有とかむしろ憧れがあったりする。とかあって「ひかる」の性別はこういう風に取り扱ってみた。単にふつうに女性として提示するよりちょっと難しいものを扱っている感じがするところが書いていて自尊心が満たされたりする。僕なんかが普通に女性として提示すると陳腐さに輪が加わるのだ。

 ちなみに昨日は六本木のウェンディーズで食事して歩きだしたので作中の場所を歩いており、その最中に思いついたので、それゆえに出てくる場所がまぁその辺りだったりする。

 無理やり、吐き出して書いた「落書き」なので文章も筋もアレで「設計」もしなかったけれど、日々忙しいのである程度書く習慣をつけたくて書いていたりって所。なので公証その他の気配りとかオザナリでございます。「小さくなったドラえもん」共々、感想は頂けると嬉しいです。

 

 

真夜中の天使1 (文春文庫)

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