はじめに
趣味で漫画的プロファイリングへのアプローチを考えてきたけど、そこそこ勉強してブログのネタになりそうな程度にはアタリを付けたので備忘として考えをまとめる。
最初の思いつき
我々人間は自らの意思で行動を決定する自立的存在であるという考えを便宜的に一旦辞めてみよう。もっと丁寧に説明もできるが一旦これでいい。つまり人間は環境によって構成され、それから、全くもって自由ではないという事だ。いっそ自由意志はないと言う立場に立ってもいい。ただ便宜的な立場を除外するなら僕は、制限付きだが自由意志は存在すると考えてるけど。すべては環境によって構成されるとする事で、人間の中に個性とか本人の判断をブラックボックス化して考なくて済むので、その立場に立ってみるということだ。
次に、人間は環境に適応した思考と行動と情動を行うものだ。つまり、ある環境に適応した思考と行動と情動の雛形を想定出来る事が想像に難くない。雛形が長期的人生経験に根差したものか、短期的環境に根差して構成されたものか、あるいは短期的環境に根差して構成された雛形を長期的に使うとどう感じるかとか、面白い思索の課題が沢山あるのだが一旦脇に置き、雛形を求めるもう一つの理由を説明する。雛形が類型化されるうるなら、雛形を生む経験も分類類型化される可能性があるのだ。
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スキーマ
運よく既存の心の学問からこの雛形の類型に使えそうな分類に行き当たった。「認知行動療法」の一つである「スキーマ療法」にある「スキーマ」という概念である。これは人生の初期の段階において形成され、それ以後も精緻化され使われ続ける認知上の信念や思い込みである。
療法であるが故に、扱われる「スキーマ」は「早期不適応スキーマ」とよばれ、人生を生き難くする「スキーマ」が中心である。
例えば「領域5過剰警戒と抑制」における、「厳密な基準/過度の批判スキーマ」を持つ人物なら「ミスに厳しい環境にいた」「よくミスするので厳しく指導された」という何れかの経験をしている可能性が疑わしい。また領域1断絶と拒絶にある各スキーマにおいては、発達心理学との類似点が多く、それが対象に存在すれば幼児期の体験を推測できる内容だ。
以下の「早期不適応スキーマ」が、この文を書く際も参照した、金剛出版 の『スキーマ療法』では紹介されている。
領域1断絶と拒絶
見捨てられ/不安定スキーマ
不信/虐待スキーマ
情緒的剥奪スキーマ
欠陥恥スキーマ
社会的孤立/疎外スキーマ
領域2自律性と行動の損傷
依存/無能スキーマ
損害や疾病に対する脆弱性キーマ
巻き込まれ/未発達の自己スキーマ
失敗スキーマ
領域3制約の欠如
権利欲求/尊大スキーマ
自制と自律の欠如スキーマ
領域4他者への追従
服従スキーマ
自己犠牲スキーマ
評価と承認の希求スキーマ
領域5過剰警戒と抑制
否定/悲観スキーマ
感情抑制スキーマ
厳密な基準/過度の批判スキーマ
罰スキーマ
(参考文献:金剛出版『スキーマ療法』)
スキーマ療法―パーソナリティの問題に対する統合的認知行動療法アプローチ
- 作者: ジェフリー・E.ヤング,マジョリエ・E.ウェイシャー,ジャネット・S.クロスコ,伊藤絵美
- 出版社/メーカー: 金剛出版
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コールドリーディング
漫画的プロファイリングの可能性として平行して考えていた事なのだが、アニメや漫画の人物のように見ただけで相手の心のうちや過去を丸裸にできなくても、話しているうちに、あるいは話す事で相手を深く理解できないだろうかという関心だ。そこで見当をつけていたのがコールド・リーディングである。
これは、喋りながら相手のプライベートを言い当てる技術である。とか、相手の情報を引き出す技術であるとか、相手以上に相手を知って理解しているかのように信じさせる技術であると紹介される。メンタリストやセラピスト、本当の霊感には恵まれなかった占い師(似非ではない占い師の名誉のために、霊感に恵まれていても調子の悪い時にこの技を使う事もあると思うと書いておく)が使う。また、警官が尋問に使ったり、営業職もその活動で使う事がある。
ちょっとした事なので、その一つ一つはコールド・リーディングと知らず、誰しもが使っている会話上のテクニックであり、これこれの話術を使って受け答えをするから、コールド・リーディングされていると言うものではない。中にはには単に相手に関心があるという場合に使いがちな応答、自分の間違いを言い逃れる応答、相手の特徴を好意的に捉えてるように印象付ける応答、といったものを集めたものだ。
ここで、このコールドリーディングの手法を元に相手の持つスキーマを探れないかというのが今回書いておきたい着想だ。目指せ「似非スピリチュアル・カウンセラー」と言った訳。『コールド・リーディング』にはバーナム効果を利用したバーナム・ステートメントと言う話術が書かれている。バーナム効果とは「誰にでも該当するような曖昧で一般的な性格をあらわす記述を、自分だけに当てはまる性格だと捉えてしまう心理学の現象(引用:コールド・リーディング Wikipedia)」であるのだが、少し補足すると、意外と我々はある種の心の葛藤が一般的であることを知らないもので、自分の心の悩みを見抜かれたように思う。バーナム効果に基づくセリフには以下のようなものがある。
- あなたは他人から好かれたい、賞賛してほしいと思っており、それにかかわらず自己を批判する傾向にあります。
- また、あなたは弱みを持っているときでも、それを普段は克服することができます。
- 外見的には規律正しく自制的ですが、内心ではくよくよしたり不安になる傾向があります。
今回のまとめ
よくあるバーナム効果に基づく設問を答えてウェブページで占いに興じた経験から言うと、すべての質問が自分に強く当てはまると思える訳ではない。ところがそんな質問をよくアメリカの手品番組で見るメンタリストはよくする。コールドリーディングで、この設問を向けられる意味を考えると、外れたとは言えない質問に対する反応を見られていると思うべきだ(ショットガンニングという手法)。この時活躍するのが、NPLやアイ・アクセシング・キューだと思う。米ドラマ「メンタリスト」でパトリック・ジェーンも良く目の動きがどうとか言っている(笑
僕はバーナム効果に基づくセリフのレベルまで、早期不適応スキーマを持つ人が感じる葛藤を、和らげて曖昧に語り、相手の心中を言い当てるのに使えないかと考えている訳だ。しかし実際バーナム効果に基づくセリフの例文を調べると意外と発達心理学の成果を取り込んだ痕跡が見えるような気がしている。Wikipediaからの抜粋に例示した1文目など、領域4の評価と承認の希求スキーマあるいは関連する心理学の知識が背景にありそうだ。
バーナム効果のあるセリフで相手の反応を見たあと、肯定的なら内容を「強化」する否定的なら「フォーキング」する。ちなみに「フォーキング」するには最初のセリフを工夫しておく必要がある。相談者が同意しない場合、受け入れやすい方向に話している内容を変えてしまいながら、再度相手の反応を探るのだ。メンタリストはこの会話のフローのテンプレートを頭の中に用意して相手と会話しているだろう。
ちなみに、僕は以下の本を読んでこの記事を書いている。あなたも参考にしてみてはどうだろうか、とか言って今日はこの辺で。
- 作者: イアンローランド,Ian Rowland,福岡洋一
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2018/06/03 初版
2018/06/03 あまりに文章ひどいから改訂
2018/06/06 改稿 発達心理学との関係が深く → 発達心理学との類似点が多く