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Lesaria の Multiple-Choice

とりあえず、日記がメインのはず。最近では、小説を公開したり、聴いた音楽や考えてることについて話してます。

第二話 長いお別れ シーン13 吉川夏雄

自作小説

 パンツ・ルックのスーツを物理身体フィジカルに重ねて、私は、朝から、新宿のホストクラブの入り口によくある顔写真を確認した。どこも空振りだったケド。新宿近辺の賃貸情報をネットで検索結果を参考に、新宿周辺の公団やアパートの多い住所を絞って聞き込みを行っていた。不良老人は何もレクチャーしてくれないし、煽ってもコツをしゃべりだすタイプでもない。結局地道に足で稼ぐ。もっと時間が取れるならと焦りながら。

「アンタ、こんなところで、何してるの?」

 遅めの昼食を済まして、新宿御苑駅北側の路地裏でレナを見つけ、意外なところで会うものとちょっと驚いた。相変わらず影が薄いので気付いて声を掛けるのにちょっとテンポが狂って、変な気分だ。乏しい表情でこちらを見つめ二言、答えた。

「猫。白い」

 ちょっと考えて、周りにはいなかったし、抱いてもいなかったので、探してるのだろうと思った。

「探してるの? 猫?」

 レナは首をかすかに縦に動かす。どういう理由で猫を探してるのか分からなかった。

<お嬢様と私は、このご近所に住む、女性のために、白くて瞳の青いシャムの血の入った子を探しております>

 急に会話に割り込んで来て、彼女の肩の辺りに出現した、小さくカワイイ、コオロギが、シルクハットとステッキを手に持ち、体を折り曲げて会釈した。ちょっと間があって昨日会ったグリレと気付いた。

「あら、あんたも居たのね」

<お嬢様は、動物がお好きで、困ってる飼い主の気持ちもお分かりになるのでしょう。いつも二人で、迷い猫をさがしたり、怪我した野良ネコを保護したりしています。この間も…>

 そう続けかけて、長くなりそうだと、私の気持ちが顔に出たのか察したようだ。途中で喋るのをやめ、尋ねて来る。

<これは失礼しました。手前のことばかり、エリカさんも、誰かお探しですか?>

「ええ、そんな感じよ」

<それは、それは、お役に立てることは、ございますでしょうか?>

 チラっとレナの方を見る。無表情だが、話は聞いているようだ。彼女にも見えるように、吉川夏雄の写真を見せる。しばらく見つめてからグリレが答えた。

<申し訳ありません。私には思い当たりません>

 グリレは、そう言って、レナの方を見る。彼女は読み取れない表情のまま、黙ったままだ。

「そう、そりゃそうよね、仕方ないわ。地道に探すしかないようね」

 私がきびすを返すと、後ろで声がする。

「こっち」

 振り返ると反対方向に歩き出している。

「ちょ、ちょっとどういうこと?」

<お嬢様に、心当たりがあるようです>

 私にそう言って、レナの後を付いて飛ぶので、戸惑いながら私も追った。


◇ ◇ ◇ 


 道中、クアンタム・アシストのお礼をなんどか口にしたのだけれど、その度に僅かに困ったような感情が読み取れるような表情でこちらを振り返る。礼を言うのを諦めた頃、唐突に立ち止まり、レナは、そこにあったアパートを見る。

 おしゃれな外観と言えば聞こえはいいけど、同時に安普請であることも見て取れる壁材を使ってる。敷地は縦長で、路地に向いた側面に、左手から二階に上る階段を屋根にして、駐輪場があり、外廊下が奥に伸びていく。ありがちな作り。もう一度、彼女の方を振り返った。

「ここ?」

「二階。一番手前」

 尋ねると、そう答えて、こちらに顔を向ける。見上げると、部屋には、表に向いて窓があるが、カーテンは閉じられている。ベランダ側に回ってみても洗濯物も干されていない。

「まぁ、行ってみるわ」

 階段を登りはじめる。上でドアが開く音がして、反射的に見上げると、男が昨日と変わらない服で、驚いた顔をして、固まってた。それほど距離はない。

 私がアシストを作動させると、視界に〔情緒補正実施中〕と表示される。頭はクリアだ。男は慌てて背中に手を回して取り出した拳銃を構えた。〔非殺傷―先制:勝率70%〕とガイドが出る。この立ち位置では仕方ない。相手の弾は相変わらず、硬質ゴムのようで、致死性はなさそうだ。

「また、あったわね」

「何の用だ。なんでここが分かった」

「私は吉川夏雄に会いたいの。あんたに用はないわ」

「そんな奴、ここには居ない。帰れ」

「ピストルを構えてそんなセリフ白々しいとは思わない?」

「目に入っているようで安心したよ。階段を降りろ」

 無意識的に自分が微笑むのを自覚しながら、一歩、階段を上がった。男が慌てて私が下ろした足を撃つが、それより早く。階段を駆け上がって、彼の足にタックルする。思惑とアシストのガイドが一致した。覆いかぶさる体重を瞬間感じたが、すぐに軽くなった。振り返ると案の定、転げ落ちていく。

 打ちどころ悪くなければいいけど。そう思いつつ、階段を下りて、男の落とした拳銃を拾う。呻きながら、こちらを見てあとずさり立ち上がろうとする。とりあえず大丈夫そうだ。〔非殺傷:勝率97%〕に続いて、〔捕縛可能〕と注釈が出てる。

<お見事です。エリカさん。でもこの方は吉川夏雄さんじゃありませんね>

 グリレは言う。私はそれを無視して、「止めてくれ」と言う男の左足に照準を合わせてトリガーに指を掛ける。随分痛いと聞く。これぐらいしておいた方が戦意を喪失してくれるだろう。

「勘弁してやってください」

 背後で叫ぶ声がした。

「その人は、悪い人じゃないんです」

 振り返ると、こざっぱりしたビジネスカジュアルなズボンとシャツを着て、アパートの階段を下って来る声の主は、吉川夏雄だった。

 


 2016/12/31 初版公開

 2017/01/10 改 訂  拳銃を取り出す描写を修正。

 

 

 

 

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