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Lesaria の Multiple-Choice

とりあえず、日記がメインのはず。最近では、小説を公開したり、聴いた音楽や考えてることについて話してます。

第二話 長いお別れ シーン11 いけすかないガキ

 俺は、事務机に座って紫煙を吐き出した。コルセットのせいで妙に正した姿勢で。最初は、せめて肘を着こうとしたが、背筋が曲がって腰に響く。おかげでこんな有様だ。

 レナは、部屋の端で、学校の制服を着たまま、本に目を落としている。愛想は兎も角、自分の娘ながら、頭はいい。あいつの読んでる本を借りて目を通してみたが、学がないので、全く理解できない。
 
 腰に気を使いながらゆっくり、窓に振り返る。夕日が沈み、きつい西日を気にすることもない。ブラインドを開けようと、腰を上げ掛け、痛みに冷や汗をかく。主義に会わないとも思ったが、拡張現実アストラルで操作できるように設定はしてなかったので諦めた。グリレに命じる。

「おい、開けてくれ」

<太一さん、わたくしめでよろしいですか?>

 声と共に、小さなアニメ調のコオロギ現れ、頭のシルクハットを手に持ち、腰を折り頭を下げる。

「お前以外にだれがいる?」

<ありがとうございます。承知しました。ソレですよね>

 グリレがステッキを振るとブラインドがあがり、道路を挟んだ向かいのビルが左手にあり、右側は、低層のビルやアパートが先まで続く。

<普段、あまり、ご用命くださらないものですから、戸惑いましたが、こうやって手伝わせていただけると嬉しいものです>
 
「ふん、大袈裟なおべんちゃらはいい。ガキから連絡はないか?」

 俺は煙草を灰皿でもみ消した。

<といいますと、まだご紹介頂けてませんが、最近こちらに出入りされている、エリカさんの事ですか?>

「そうだ。あの、いけすかないガキの事だ」

 その時、扉が開く音が背後でして、入ってきた本人が答えた。

「いけすかないガキで悪かったわね」

 流石に気まずい。だが極めて冷静に尋ねた。

「なんの用だ? 独立したんじゃなかったのか?」

 ソファーに体を投げ出したのが音で分かる。

「あーら、ご挨拶ね。あんた見たいに、賭け事にうつつを抜かさずに、私は依頼を受けてきたわよ。正式にね」

 腰を庇いながら、椅子を回転させて、ゆっくり振り返る。

<お初にお目にかかります。私、探偵社で執事をしています。グリレと申します>

 グリレは名乗り、レナはすっと視線をガキに向けてから、再び本に目を落とした。

「言っただろう。未成年からの依頼は受けれない。悪くすれば探偵免許が取り消される」

 馬鹿にしたようにこちらを見てから、得意顔で、喋りだす。

「依頼主は、神崎賢哉。勤め先はC大学。准教授よ。内容は人探し。元会社社長、吉川夏雄だわ。見積もりを出して頂戴」

「それが吉川アリスの父親って訳か」

認知症の割に察しがいいのね」

 そのあとに「はじめまして、グリレ」と付け加える。

「じゃあ、よろしくね、不良老人」

 いちいち勘に障る。ソファから腰を上げて、出ていこうとするので制止する。

「まぁ、ちょっと待て」

「なによ、役に立つ話なワケ?」

「母親の浮気相手は、勤める会社の専務だ。富岡という」

 俺は新しく一本取り出して、火を点けて吸い込む。そして吐き出した。煙はゆっくりと天井まで上がっていく。

「お前、どうせ依頼人に関しては何も調べてないんだろう。吉川アリスは、F型免疫不全症だそうだ。母親から聞いた。都内の小中高一貫教育の私立に通ってるこれは着ていた制服から分かった。そこには、母親の勤める会社が多額の寄付を行ってる」

「あら、認知症のわりに気が利くのね。お礼を言っておくわ」

「まぁまて、話は、まだある。アレは余計な菌に感染しないように、無菌室に入る必要がある。レナに調べさせた。首都圏で治療を行ってる総合病院は、五つあるが、その何処にも、該当する患者は入院していない」

「それで?」

「この一件には裏があるぞ。お前、厄介な事に巻き込まれちゃいないだろうな」

 ガキは口の端を少し上にあげて、笑う。俺は少し不安になった。

「総合病院で治療を受けてるとは限らないんじゃない? それに地方に優れた医者が居て、そこに入院させてるのかも。範囲を広げてしらべて。私も本人に聴いておくわ」

「気が向いたら調べておいてやる。お前も報告をして行け」

「吉川夏雄は、この新宿周辺に居るみたいよ。結構簡単に見つかるかも」

「他には? 本当に、危険なことは無いだろうな」

「特に無いわ。浮気相手はノヴァーリス・システムの富岡で一致よ。父親の会社はソイツに、ソコとの取引を切られて傾いたみたい。全部、富岡のせいよね。忘れてたわ。見積もりは出来次第、ここに送って」

 ソファーから此方にコンタクト・カードのコピーを手で渡そうとする。

「グリレ、受け取れ」

<承知しました。太一さん>

 ガキは、渡した後、何かに気付いたのか、こっちをジロジロ見て言う。

「あんた、妙に姿勢がいいわね」

「だからどうした」

 得たりという顔をして、うれしそうに言い放った。

「ぎっくり腰って訳? お生憎様」

 まったく勘に障るし、面倒はかかる。勝手に依頼は受けてくる厄介極まりない。鼻歌交じりに、扉を閉めて出ていくのを見送って、煙草をもみ消す。背もたれに寄りかかろうとすると、痛みがあり、俺は恐々姿勢を戻した。
 ガキのあの笑い方には見覚えがあって気になった。だから、それからしばらく、昔を思い出しながら、物思いに耽ることになった。だが結局、思い出せなかった。

 


 2016/11/05 初版公開

 2016/11/05 改 訂 細々修正に加え最後に2行追加 

2016/11/06 改 訂 エリカと太一のやりとりを情報交換ぽく。他、少々。

2016/11/28 改 訂 ちょこっと重複する記述を修正。

2017/02/12 改 訂 設定と矛盾する記述を修正。アリスは中学生だものw

 

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